私は都内に住んでいるのですが、引っ越すたびに都内の中心部に近づき、今ではほぼ中心部に住んでいます。
年々家賃は上がるものの、それに見合う収納は確保出来ず……。
置ける荷物も限界に近づいたある日、リスクヘッジの意味も込めて、荷物の一部をトランクルームに移すことを決めました。
結果、今では広々と部屋を活用でき、もう一つの「部屋」であるトランクルームを行き来する毎日です。
そんなある日、「トランクルームって投資案件としてはどうなのかな?」と思ったのです。
投資家という職業柄、関わったサービスに対して、「投資できるかどうか」を考えてしまう私。
今回はトランクルームが投資に適しているのか解説していこうと思います。
トランクルーム投資とは?
そもそもトランクルームって何?
「トランクルーム」は「普段使わない荷物や道具、趣味の品物などを預けることが出来る貸しスペース」のこと。
大都市ではだいぶ浸透してきたサービスですが、地方ではまだまだ馴染みのないものだと思います。
「自宅の倉庫でもよくない?」と思われた方もいると思いますが、トランクルームは空調管理が徹底されていたり(会社によって異なる)、セキュリティが万全、なおかつ荷物の出し入れも自由です。
そのため安心安全に荷物を預けることができ、利便性が高いのです。
トランクルーム投資とは、このスペースを貸し出すことによって利益を上げる投資方法です。
トランクルーム投資にかかる初期費用は?
トランクルームは大きくわけると「屋外コンテナタイプ」、「屋内トランクタイプ」に分類されます。
屋外型とは空いている土地にコンテナを設置し、内部を改造して仕切ったスペースを貸し出す形式、屋内型は建物の一部または全部をパーテーションなどで区切って貸し出す形式です。
初期投資で比較すると、屋外型だと500〜1000万円ほど、屋内型だと300〜800万円ほどと言われています。
初期費用で比較すると、最も近い投資対象は、ワンルームマンション投資が近いのではないでしょうか。
リターンはどのくらい?
まず、前提としてきちんと知っておきたいのは、「想定利回り」と「実質利回り」の違い。
想定利回りとは、満室時の収益を初期費用で割った数字のこと。
すぐに計算できるので便利ですが、これはあくまでも参考値です。
特に、トランクルームは満室になるまで時間がかかると言われています。
「利回りは20%超です!」、「必ず儲かります!」など、投資あるあるのような謳い文句を耳にしますが、想定利回りを当てにしてしまうと思ったように利益が上がらない可能性があります。
一方、実質利回りとは、年間の収益から固定資産税や諸費用を引いた額を初期費用で割った数字です。
費用をきちんと突き詰めて計上するほど、より正確な数字が得られます。
具体的には、電気代やセキュリティ、管理手数料などでしょう。
実質利回りを考えると、個人的にはおおよそ15%が目安であると見積もっています。
もちろん様々な条件によって変動しますので、この数字を鵜呑みにはしないでくださいね。
経営(運営)する方法は?
【事業用定期借地方式】
自身の土地をトランクルーム業者へ貸し出して、一定の収入をもらう方法。
あくまでも地代なので毎月安定した収入が得られる代わりに、トランクルームの盛況ぶりと収入は連動しません。
【業務委託方式】
建物や設備などの建設や、経営全般は自身で行い、細かな業務を業者に委託する方法。
稼働率に見合った収入は入りますが、管理会社に一定の手数料を支払うことになります。
【リースバック方式】
不動産投資でも一時期話題になりましたよね。その方法と同様の方式です。
リースバック=一括借り上げとも言いますが、施設ごと運営会社に貸し出して毎月一定の収入を得るシステムです。
【フランチャイズ方式】
運営会社の名前とノウハウを借りて運営する方式。
コンビニやファーストフードによくある形態ですね。
運営会社の知名度があるため集客が見込めますが、その分フランチャイズ料がかかります。
【個人運営】
これは字のごとく全てを自分で管理・運営していくスタイルです。
手間と時間はかかりますが、成功すれば収入もそのまま入ってきます。
トランクルームは安心の投資案件か?
〇トランクルーム投資のメリット
・初期費用が安い
居住用物件を建てることを考えれば、トランクルームにかかる初期費用は安いといえます。
・経営管理コストが安い
居住用物件では、退去のたびにリフォームが必要だったり、定期的に水まわりや内装の修繕が発生したりします。
しかし、トランクルームには水まわりがありませんし、大規模なリフォームもほぼ必要ありません。
また、人が暮らしているわけではないので、入居者間のトラブルとも無縁です。
総じて、管理コストが少なくて済みます。
・市場規模が拡大中
日本のトランクルーム市場は、年8%の伸び率で拡大しているそうです。
日本でトランクルームを利用している世帯は全体の0.8%といわれていますが、トランクルームの利用率がもっとも高いアメリカでは10%、近年増加してきている香港やシンガポールでも3%まで浸透しています。
つまり、まだまだ拡大の余地があることがわかりますね。
・長期的に安定しやすい
トランクルームは、スペースを少しずつ区切って多くの人に貸し出す方式です。
その分リスクが分散し、長い目で見ると稼働率が安定しやすいのが特徴といえます。
×トランクルーム投資のデメリット
・立地によっては利益がうまれにくい
他の不動産投資にもいえることですが、立地は大きなポイントです。
利用ニーズがあるかというのも大きな問題ですが、周辺にトランクルームが多い場合は、価格競争が発生して料金が下がってしまうことがあります。
・空室リスク
空室リスクはトランクルームに限ったことではありませんが、トランクルームはまだニッチなビジネスであり、特に稼働直後に満室になるケースはほぼないようです。
満室になるまでの最初の数年を乗り越えられるだけの体力が必要になります。
・税制面での優遇がない
居住用物件ではないので、固定資産税・都市計画税の軽減が受けられません。
実質利回りを計算するときには、気をつけましょう。
以上のようなリスク・リターンが存在する事をお忘れなく。
基本的には、不動産投資と似たり寄ったりのリスク・リターンだとは思いますが、まだ発展途上のビジネスなので、先行逃げ切りであれば単純な不動産投資より向いているかもしれません。
しかし“安心”という面でお話しすると、一概に良いとは言えません。
トランクルーム内の空調管理や、立地の良し悪し、税金対策など、多くのことを鑑みて判断しなければいけませんので、手間や安心度合いは、まだまだといえるでしょう。
トランクルーム投資で成功するためのポイント
市場調査
周辺地域の人口や年齢層、世帯構成の傾向をはじめ、平日・休日の人の流れなどもチェックしておきましょう。
人通りが極端に少なかったり、日中ずっと日陰になったりするような場所は、セキュリティ面の不安にもつながります。
また、近くに他社のトランクルームがある場合は、料金の相場や稼働状況も大事な情報です。
運営方式・運営会社選び
ほとんどの人は、管理や運営の一部を業者に委託することになるかと思います。
先ほど紹介した運営方式のどれを選ぶのか、そしてどの業者に委託するのかは重要なポイントです。
日々の管理を安心してまかせることができ、集客のノウハウも持っている業者を選びたいですね。
そのためには、委託を検討している業者が実際に運営している施設を調べてみましょう。
稼働率や管理状況、セキュリティ面など、現地に足を運ぶことでわかることもあります。
また、コスト面について、はっきりと資料に明記している業者はより安心につながります。
価格設定
運営業者に土地や建物を貸し出す場合には、契約時の賃料設定がその後の利益を決定します。
あとから後悔しないよう、事前に周辺の賃料の相場を確認しておきましょう。
また、自分で運営を行う場合は料金を決めなければなりません。
高すぎると借り手がつきませんし、低すぎると収益が上がりません。
運営会社と相談しながら、バランスよく価格を設定しましょう。
集客
集客率は利益に直結しています。
特に、自身で運営を行う場合は、積極的な広報が必要です。
広告を出したり、クチコミが発生しやすいようなサービスを取り入れるなど、集客には力を入れましょう。
セキュリティ
不要なコストを削るのは大切なことですが、あまりセキュリティを削ってしまうと、盗難や不法投棄など、大きなトラブルにつながる可能性があります。
必要な部分には、コストをかける判断も大切です。
結局のところ投資として向いているの?
ここまでは、トランクルーム投資に対する基本的情報について触れてきました。
しかしここから「様々なものに投資案件に投資をしてきた私」が思う、「トランクルームが投資に適しているのか?」という投資家目線でのお話になります。
あくまで主観の意見になりますが、ご参考ください。
投資家が思うトランクルーム投資は?
まず先に結論から話しますと、私はトランクルーム投資には積極的姿勢にはなれません。
理由としては、大きく2点あります。
・トランクルームはあくまで嗜好品としての意味合いが強い!
・果たして投資案件と言えるほどトランクルームが必要なのか?
私は投資を決める際に、「その投資の重要性」を考えるようにしています。
例えばマンションであれば、「この立地で、この値段なら誰か住んでくれるかな」、「最悪、自分の住む場所がなくなったらここに住もう」など、リスクヘッジの観点からも投資に向かう気持ちになります。
ではトランクルームはどうでしょうか。
確かに市場規模は拡大しているので、投資案件としては魅力的です。
またニーズの先取りや、先見の明があれば純粋な不動産投資よりはリターンは多く得られるのかもしれません。
ただ焦りは禁物です。
私の個人的見解ですと、投資は素人の方がむやみにはじめて勝てるものでもありませんし、成功者がテレビなどで自慢をしていますが、いずれもビギナーズラックの要素が強いのかなと思ってしまいます。
投資案件として有望かもしれませんが、あくまでご自身の意思で始められる事をおすすめします。
トランクルームとの向き合い方は?
私はこれまで通り、トランクルームを使う側でいようと思います(もちろん静観目線も含めて)。
トランクルームは、家に入りきらない荷物分の保管場所や、趣味のものを置く部屋など使う人によって千差万別です。
トランクルームは、投資案件というよりは、人々の生活の補填要素が強いため、「なくてはならないもの」というよりは、「なくても困らないもの」と位置付けられます。
まとめ
今回はトランクルームを投資の観点から説明させていただきました。
筆者としては静観姿勢を保ちつつ、投資としては前向きではないスタンスです。
もちろん、逆の立場の方もいらっしゃいます。
ここでどちらが正解と決めつけるつもりもありませんし、投資に仕向けるつもりもありません。
みなさんがこれを読まれた時にどう判断されるかは自由ですし、この内容を踏み台にしてご自身の投資に対する考え方を飛躍していただければ嬉しい限りです。
【参考】
トランクルーム投資は高利回り?リスクや注意点も理解しよう!
https://www.tainavi-pp.com/investment/other/97/
トランクルーム投資で失敗?利益を確実に得るための方法とは
https://www.inaba-box.jp/magazine/10659/
トランクルーム投資は不動産のプロが選ぶプラスルームへ
トランクルーム:投資収益(ネット利回り)
http://ooya-mikata.com/trankroom/trank_invest2.html
300万円で始め、たった1年で初期費用を回収!? ストレージ投資は本当に儲かる?
https://www.rakumachi.jp/news/column/87652
【追記】2019年6月20日