先日、福岡の実家で一人暮らしをする母が、有料老人ホームへ入居することになりました。

親を施設に預けるというのは、子どもとしては苦渋の決断……。

しかし、私が妻と子どもで住んでいる狭い都会のマンションに呼び寄せることは、やはり現実的ではありませんでした。

老人ホームなら安全に生活できるだろうと考え、母本人とも相談の上、決定しました。

 

その際に困ったのが、実家に残った家具類をどうするか、ということです。

母にとって愛着のある家具や品物が多く、売却したり、捨てたりすることは気が引けますし、本人も嫌がります。

かといって、母が老人ホームに入ると空き家となる実家に、そのまま置いておくこともできません……。

 

そんなとき、入居先となる老人ホームの職員さんが助言をくれました。

「トランクルームに預けてはいかがですか?」

この職員さんから教えてもらった「愛用の家具類をトランクルームに預ける意味」がとても印象的でしたのでご紹介します。

 

 

増え続ける老人ホームの数と一人暮らしの高齢者

おばあちゃんと家

 

まず、老人ホーム事情と高齢者事情について、少し紹介しておきます。

今や日本の高齢化率は27.7%(2017年10月時点)で、4人に1人以上が高齢者。

それとともに老人ホームの数も、年々増えているようです。

厚生労働省の資料によれば、高齢者向けの公的施設である「特別養護老人ホーム」の数は、2016年時点において全国で9,645施設。2000年時点では4,463施設でしたから、21世紀になってから倍近くに植えたのです。

しかし、特別養護老人ホームはそれでも数が足りず、ベッドが空くのを待ついわゆる『待機老人』が全国で約36万人もいるのが現状です。

 

※参考サイト

高齢者向け住まいの数の推移 資料6ページ

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000171814.pdf

 

 

一方、民間施設である「有料老人ホーム」の数は、2016年時点では全国で1万1,739施設。

こちらは2000年時点では349施設しかなかったわけですから、16年ほどで約37倍も増えたことになります。

ちょっと驚異的な増え方だと言えます。

 

老人ホームに入居する理由は、人によってそれぞれだと思います。

私の母のように、一人暮らしをしていて介護が必要な状態となり、最終的に老人ホームで介護サービスを受けるという人も多いようです。

職員さんによれば、「自宅で一人暮らしをしていた方は多い」とのこと。

家族と同居していれば家族の介護を受けられるので、老人ホームに入らないで済むという理由もあるでしょう。

 

『平成29年度版高齢社会白書』によれば、65歳以上の人がいる世帯のうち、「単独世帯」の割合は全体の26.3%、人口数で約624万世帯です(2015年調査)。

つまり、全国で約624万人の高齢者が一人暮らしをしていることになります。

一人で「孤独死」を迎えるよりは、老人ホームに入って職員や他の入居者と楽しく生活し、そこで余生ずっと過ごしたいと思うのは、最もなことでもあるでしょう。

 

※参考サイト

平成29年度版高齢社会白書

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_1.html

 

一人暮らしをしている人は年々増えており、今後さらに増えると予想されます。

老人ホームが年々増えていることにも、少なからず影響を与えているとも考えられます。

 

 

老人ホームに入居する人は、トランクルームに何を預ける?

 捨てられない思い出の品

 

さて、年々増えている老人ホームですが、入居にあたって困るのが「家に残してきた家具をどうするか」問題。

母が入居した有料老人ホームでは、自分の部屋に家具を多少は持ち込むことができました。

しかし、ホームの個室はそれほど広くなく、持ち込める家具の数はごくわずか。

自宅で使っていた家具の大半は、そのまま家に残すほかありませんでした。

 

先にも触れた通り、母が入居した老人ホーム職員の方の話によれば、老人ホームに入居する際にトランクルームに家具を預ける人は多いようです。

トランクルームに預ける家具として多いのは、「嫁入り道具に持ってきた家具」。

古く、長年使っているため、通常のリサイクルショップでは買い取ってもらえないことも多いようです。

かといって、思い出が詰まっているので捨てられない、そういうものをトランクルームに預けるのです。

 

また、話を聞いてびっくりしたのが「仏壇」を預ける人が多いということ。

老人ホームに仏壇を持ち込む人も中にはいるそうですが、ある程度大きな仏壇になると、部屋の中に置くことはできません。

しかし、簡単に処分することなどできるはずがありません。

そこで、いったんトランクルームに預けておくというわけです。

 

それから家具以外にも、思い出の人形や、置物などを預ける人が多いようです。

老人ホームには一番お気に入りの人形だけ持ってきて、それ以外のものを預けるという女性高齢者の方もいるそうです。

中には、自宅にいるときに趣味で集めたアンティークの置物をトランクルームに預け、並べたところを写した写真だけ老人ホームに持参している人もいると言います。

 

最近は空調設備完備のトランクルームもあります。

大切な家具や人形などを預けるときは、品物が長持ちするトランクルームを選ぶ必要もあるでしょう。

 

 

捨てられないものをトランクルームに預ける意味とは?

思い出

 

老人ホーム入居にあたって、トランクルームに家具や雑貨類を預けるのはなぜでしょうか。

ひとつの理由に、「いつか老人ホームを離れて、普通の生活に戻るかもしれない」ということが挙げられます。

実際、私の母も「施設が気に入らなかったら、シニア向けのマンションなどに住み替えをするかもしれない。そのとき、また家具を使うかもしれないから」と言っています。

その際、トランクルームに家具や雑貨類を保管しておけば、すぐに再び使用することができるわけです。

 

しかし老人ホームの職員さんによると、トランクルームに家具や雑貨類を預けるのは再使用に備えるためだけではなく、もっと重要な理由があると言います。

 

その理由は何でしょうか?

職員さんが言うには、「老人ホーム入居時にできる心の穴を少しでも小さくするため」とのこと。

 

老人ホームへの入居は、長年暮らしてきた自宅と別れることでもあります。

母のように自宅を整理した人の場合、自宅はもはや自分のものではなく、そこはすでに帰る場所ではなくなるわけです。

またそれは、慣れ親しんだ庭や近所の風景と別れることでもあります。

しかも移り住む老人ホームは、無機質な外観で既に暮らしている他の入居者は見知らぬ人ばかり。

老人ホームに入居するとは、たとえ一人暮らしの人であっても、少なからず寂しさ、悲しさを伴うものであるわけです。

 

そうした「別れ」の場面で、長年使ってきた家具やお気に入りの品が、捨てざるを得ないとなるとどうでしょうか。

ただでさえ住み慣れた場所との別れがあるのに、その上、愛着のある家具や品物まで無くしたら、「心の穴」はますます大きくなるでしょう。

 

しかし、お気に入りの家具や思い出の品をトランクルームに預けておけば、「自分が大切にしてきた物はきちんと保管されている」という安堵感を持つことができます。

もしかしたら二度と見ることはないかもしれないものの、「まだ残っている」と思えることは、老人ホームへの引っ越しに伴う喪失感を和らげる効果を期待できるのです。

 

実際、老人ホームに入居後、慣れ親しんだ自宅と離れたことによる寂しさや喪失感から、自室に閉じこもりがちになったり、心が鬱々とするようになったりする人も多いそうです。

トランクルームにかつて愛した物を預けておくと、そうした状況に陥るリスクを回避するのに一役買う、と言えるのかもしれません。

 

 

まとめ

トランクルーム

 

トランクルームというと、「物を預ける場所」とイメージする人は多いでしょう。

しかし、老人ホーム入居時にトランクルームに愛用の家具や思い出の品物を預けるということは、単純な物を預ける行為とは言えません。

あえて言葉にするなら、「自宅で過ごした日々」、「物に注いできた愛情」そのものを預ける行為と言えるかもしれません。

いわば、「気持ちを預ける場所」となっているわけです。

 

老人ホームは急速に増え続けていて、高齢化が進む中、今後もさらに増え続けると予想されます。

それに伴い、トランクルームを利用する高齢者の方もどんどん増えていきそうです。

 

 

 

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