以前、私の実家(愛知県)が副業でトランクルーム運営を始めた、という話を書きました(※こちら)。
その関係で、トランクルーム関係のニュースは気を付けてチェックしているのですが、最近トランクルームを手がけている企業の業績が良く、株価も期待が持てるというニュースを発見したのです。
『急拡大する市場、“株高の夢”搭載する「トランクルーム関連株」を買え <株探トップ特集>』
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201908150724
なるほど、最近では自宅(東京都世田谷区)の近くでもハローストレージなどのトランクルームをよく見かけるようになりました。
どうやらセルフストレージと呼ばれるトランクルームやレンタルコンテナの人気が上昇し、数もどんどん増えているようなのです。
ただ、その後発生したコロナウイルスの流行で、自宅などで仕事をする「リモートワーク」が増加。
生活様式が変わり、収納サービスを取り巻く環境も刻々と変化しています。
そこで今回は、国土交通省や総務省が発表する資料に加え、トランクルーム業界自体が発表しているデータから、トランクルームの増加とその理由についてレポートしていきたいと思います。
2020年の国内市場規模は2011年比で1.8倍!
○2020年の予測は829億円
株式会社 矢野経済研究所が発表した国内の収納サービス市場トレンド調査(https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP508967_Y9A500C1000000/)によると、トランクルームやコンテナ収納といった収納サービスの国内市場規模は年6~8%ずつ増えています。
2020年には829億円に達すると予測されており、これは東日本大震災のあった2011年に比べ約1.8倍もの規模です。
○2025年には1,000億円突破も!
この10年の統計で年6%以上増え続けているということは、遅くとも2025年頃には収納サービスの国内市場規模が1,000億円を突破する計算となります。
ただここでこの予想が不確定なものとなる事件が発生しました。
「新型コロナウイルス」の世界的大流行です。
新型コロナウイルスの流行は「テレワークの普及」「在宅勤務の増加」という働き方の変化を推し進め、そのことは「通勤機会の減少」、ひいては「通勤に便利な場所に住む必要性の低下」というライフスタイルのシフトを招き始めています。
このライフスタイルのシフトはトランクルームなどの収納サービスの増減に大きな影響を与えることが考えられるのです。
東京圏に全体の6割が集中
前出の矢野経済研究所の調査によると、2018年12月末時点で、トランクルームやコンテナ収納の室数は約52.5万室と推計されています。
そのうち東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の一都三県)には約30.6万室があると推計されており、これは実に全体の6割が集中している計算となります。
首都圏には人口が集中しているためこの結果は当然というべきなのですが、前述したライフスタイルのシフトで、「首都圏に住むのをやめて地方に居を構え、月に数回だけ東京の本社に通う」といった生活が拡がった場合、トランクルームの増加や、室数の分布にはどのような影響が考えられるでしょうか。
そこで、まずはトランクルームなどの収納サービスが増加する理由を考えてみます。
トランクルーム増加3つの理由
1 東京への人口の一極集中
内閣官房まち・ひと・しごと創世本部事務局が発表した「東京一極集中の現状について」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/kpi_kenshouteam/h29-10-06-shiryou2.pdf)
という資料によると、『1994年、1995年は東京圏(一都三県)から転出超過となったが、以後は一貫して転入超過となっている』とあり、特に東日本大震災のあった2011年以降その傾向が強まっているとあります。
つまり日本中からどんどん東京圏に人が集まってきているわけです。
一方、そのようにして集まってきた人々が暮らす住宅の広さを見てみると、東京都心部の延べ床面積の平均は62.45㎡であり、全国平均の93.04㎡と比べると約2/3の面積となっています。
【参照】総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html
室内が狭ければ、当然押し入れやクローゼットといった収納にしわ寄せがいきます。
「狭く収納スペースが少ない住宅」が多い東京圏に、全国から人口が集中するわけですから、置き場のない荷物の収納先として、トランクルームやレンタルコンテナが必要とされるのは当然の流れです。
2 都心の「マンション」に住む人の増加
東京圏という限られたスペースに多くの人口が集中するわけですから、土地の有効利用という観点で、どうしても一戸建てよりもマンションの方が効率が良くなります。
結果的に都心部では一戸建てよりも高層マンションなどに住む人が多くなるわけです。
しかしマンションは一戸建てに比べ延べ床面積が狭いという傾向があります。
さらに一戸建てのように「屋根裏」・「床下」収納を設けるのが難しいという弱点もあるのです。
このマンションに住む人が多いという傾向も、収納サービスが増加する原因となります。
3 阪神淡路大震災・東日本大震災の教訓
阪神淡路大震災と東日本大震災という2度の大災害では人命はもちろんのこと、多くの家財も被害に遭いました。
その教訓から、家財道具や大切な思い出の品をトランクルームなどに保管する人が増えてきました。
大震災レベルの災害が起こった場合、トランクルームなどに保管していれば確実に安全というわけではありませんが、自宅とトランクルームという離れた2つの場所に保管しておけば、「倒壊してしまう」というリスクを分散することができるのです。
実際私も自宅近くのマンションのワンフロアを利用したトランクルームと、郊外にコンテナを設置したレンタルコンテナを利用しています。
特に郊外のレンタルコンテナはその構造上、倒壊したり破損してしまうことは考えにくいため、リスクヘッジに有効だと思っています。
海外ではさらに普及が進んでいる
株式会社キュラーズが発表した「世界のトランクルーム市場と主な会社」(https://www.quraz.com/trunkroomchannel/marketinfo/marketinfo008.aspx)
によると、トランクルーム市場が誕生したアメリカではその市場は約40年間にわたって成長を続け、今日では普及率は10%(10世帯に1世帯が利用)、市場規模は約230億米ドル(約2兆4700億円)にもなっています。
カナダ(10億米ドル)やオーストラリア(6億米ドル)、イギリス(5億米ドル)といった欧米諸国の市場も順調に伸びており、海外では日本以上に普及が進んでいる状況です。
まとめ 「第三の場所」として伸びるトランクルーム需要
元々狭小住宅・マンションが多い日本では収納スペースに限りがあり、トランクルームが普及する下地がありました。
しかし、コロナウイルスの流行によるライフスタイルの変化で、その状況が変わる可能性があります。
テレワークが普及し、在宅勤務が主流となって、「会社に行くのは月に1回」という状況となれば、通勤圏内に住む必要は無く、海沿いの風光明媚な場所や避暑地、実家にUターンすることも可能。
東京圏への人口の集中という状況が解消される可能性があります。
そうなれば「収納スペースの不足」という問題は解決し、トランクルームの需要は減少することも考えられるのです。
しかし一方で、たまに出社する際に多くの仕事道具を持ち運ぶことは難しく、といってオフィスは縮小されているため個人のために用意される収納スペースはほとんどない。
となると、「自宅」「オフィス」に次ぐ「第三の場所」としてトランクルームを活用する場面が増えてくることが考えられます。
またこの「第三の場所」という考え方は、災害時に大切なものを守るというリスクヘッジにも有効です。
アフターコロナの世界では、これまでとは違った形で収納サービスが伸びていくのかも知れません。
文:友三郎(40代・元歌舞伎役者 現ファイナンシャルプランナー)