一般的に土地活用といえば、まずはアパートやマンション等の賃貸住宅経営を考える人も多いかもしれません。
でも、現在進行形で進んでいる少子高齢化。
さらに、職住近接などライフスタイルの変化により、将来的な賃貸住宅経営は、駅近の限られた土地以外は(今以上に!)難しくなるといわれています。
所有している土地が駅から遠い、狭さや不整形のために活用が難しい、幹線道路沿いで騒音がひどい……。
そんなお悩みを抱える地主さんも少なくないでしょう。
しかし、実はそんな土地だからこそ向いているかもしれない活用法がありました。
それが「トランクルーム経営」という選択肢です!
私の実家も、小規模ではありますが不動産賃貸業を営んでいます。
しかし、所有している土地の多くは駅から遠い場所にあり、アパートやマンションを建てるには不利な立地。
それに加え、不整形であったり小分けの土地であったり、活用も難しい形状のものばかり。
いずれは私が受け継ぐことになろうであろう、この土地の活用法に悩んでいました。
そんなときに知ったのがトランクルーム経営。
そこで、トランクルーム不動産投資について、そのメリットや市場規模など、色々な角度から調べてみました。
トランクルームの現状と展望
みなさん、トランクルームを利用したことはありますか?
きっとまだないという方がほとんどですよね。
最近、街中でトランクルームの案内や看板を見かけることが増えたような気がしますが、いったいどんな人がどんな目的で使っているのでしょうか。
調べてみたところ、個人による利用と法人による利用があるようです。
個人利用の場合は、趣味のものや季節性のものを預ける人が多いそう。
・ゴルフバッグやサーフィンボード等のスポーツ用品
・テントやBBQ用品等のアウトドアグッズ
・クリスマスツリーやひな人形のような季節性のアイテム
などです。
また、引越しやリフォーム時に、家財の一時保管場所として使用するという使い方もあります。
法人利用では、書類や資材の保存・保管をはじめ、普段は使用しない備品等の置き場所として使われているケースが多いようです。
具体的には、古い書類や、キャンペーンで使うパネルやコスチューム、商品の販促グッズなど。
つまり、日常的に使うわけではないけれど、ある程度定期的に利用するために捨ててしまうことができないもの。
そして、家や会社のように普段過ごす空間では、邪魔になる物品を保管するために、外部収納スペースとして使うサービスなのですね。
さて、このトランクルームですが、日本ではまだまだこれからの業界。
ビジネスとしての市場規模は、年々拡大傾向にあります。
トランクルームの利用が進んでいるアメリカでは、なんと約10世帯のうち1世帯程度がこうしたトランクルーム等を使っているそうです(*1)。
日本においては、まだ約130世帯あたりに1世帯ほどの利用率だとか(*2)。
都心に人口が集中し、狭小住空間で生活する人も多い日本にこそ、こういった外部収納スペースを必要としている人は多そうです。
つまり、潜在的な需要は高いと考えられるのです。
実際、このような収納スペースビジネスは、日本においてここ数年約10%の伸びで毎年拡大基調を続けています。2015年の時点で市場規模は600億円を超えており(*3)、
今後2027年までには1000億円を超えるとも予想されています(*4)。
2018年には初めてトランクルームのファンドも設立されました。
いずれはアメリカのようにトランクルーム特化型REIT(不動産投資信託)も登場するのかもしれません。
そう、トランクルーム業界は現在、ビジネスとして、かな〜り盛り上がってきているのです!
出典
(*1) http://www.japanssa.org/view.html
(*2) https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1585
(*3) https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1585
(*4) https://jp.ub-speeda.com/analysis/archive/37/
トランクルームのメリット
もしトランクルームを経営するとしたら、メリットやデメリットはどういう点にあるのでしょうか。
まずはメリットから見ていきましょう。
トランクルーム経営のメリットとしては、5つのポイントが挙げられます。
-
潜在需要が高い
-
初期投資が少ない
-
維持費用が少ない
-
立地が悪くても成功しやすい
-
利回りが良い
ひとつめは「潜在需要が高い」という点です。
これは先ほどご紹介した通りですね。
次に「初期投資が少ない」ということ。
私がこれまで本業界で培ってきた知識ですが、一般的な土地活用として挙げられる賃貸住宅経営などに比べて、参入費用が低く抑えられます。
なぜか?
居住空間に比べて、必要な設備が圧倒的に少ないからです。
給排水設備は必須ではありませんし、各部屋の複雑な電気配線もなく、部屋を仕切る厚い壁も必要ありません。
あった方がいい設備としてはエアコンなどの空調と、防犯カメラくらいでしょうか。
したがって、トランクルーム経営は、アパートやマンションなどの賃貸住宅経営に比べて、初期投資が格段に低く抑えられるのです!
3つめは「維持費用が少ない」という点です。
参入費用だけではなく、維持管理していく為のランニングコストも、賃貸住宅に比べるとさほどかかりません。
賃貸住宅経営の場合、10数年ごとに大規模な改修工事が必要で、入退去のタイミングで小規模な修繕も必要です。
もちろん、トランクルームでも外壁や電気周りの改修は定期的に必要でしょうが、水まわりやガスは不要です。
管理面でも、賃貸住宅ではないから住民トラブルが存在しません。
また、保管した物品に対して管理責任を負うわけではないので、クレームの類も少なそうです。
そう考えると、維持費用だけでなく、手間も少ないといえるでしょう。
そして、重要なのが「立地が悪くても成功しやすい」という点です。
賃貸住宅経営の場合は、狭小地では建設できませんし、基本的に駅近の立地が何より有利です。
また、幹線道路沿では騒音の影響なども考慮しなければいけません。
しかし、トランクルームにおいては、これらの条件はあまり弱点とはなりません。
人が居住するわけではないので、ごく小さな土地でも建設可能ですし、利用者側からすれば荷物の保管場所は特に駅近である必要はありません。
むしろ、大きな荷物を運ぶ場合、多くの人は車を利用します。幹線道路沿いのようにアクセス性の高い場所にある方が利便性も高いのです。
さて、ここまで様々なメリットを紹介してきましたが、何よりも気になるのは利回りの高さでしょう。
ここでは、具体的に数字をあげて見ていきます。
トランクルームには大きく分けて2つのタイプ(屋内型と屋外型)がありますが、安く始められる屋外型のコンテナタイプについて考えてみましょう。
コンテナの場合、鉄の市況にも左右されることもありますが、一般的な20フィートのコンテナ1基(広さは約8畳)は80~130万円程が多いようです。
安さを重視するならば、中古のコンテナを綺麗にして使うのもアリかもしれませんね。
他に必要な費用として、舗装工事、設置工事、看板、照明、防犯カメラ、宣伝費等が挙げられます。
それぞれの設備によって価格の幅はあると思いますが、だいたい30〜50万円程を概算として見積もっておけばいいでしょう。
次に賃料です。
habit magazine運営元である株式会社icomのコンテナ物件サイト(https://habit156.com/container/)によると、埼玉県さいたま市におけるトランクルーム賃料の相場は、1畳あたり3000〜5000円ほど。
コンテナ1基で8畳ですから、満室経営することができれば1ヶ月の賃料は約3万円。
1年満室であれば、36万円の収入となります。
不動産投資の利益は、シンプルにいえば「賃料収入額÷投資額」で求めることができます。
これを「表面利回り」といいます。
前述のケースで満室経営を想定した場合、利回りは20%程度になります。
昨今の賃貸住宅経営の場合、利回りは10%もいけば高い方ですから、コンテナ経営はそれに比べれば非常に高い数字が期待できるといえます。
運営中のランニングコストは、管理委託費、定期清掃費、電気代、そして税金くらいのものです。
どれもある程度安定して発生する費用ですので、年間収入も計算しやすいでしょう。
トランクルーム経営のデメリット
それでは、重要なデメリットについても見てみましょう。
・フル稼働まで時間がかかる
・節税にならない
・用途地域の制限を受ける
ひとつめは、ずばり、満室経営までに時間がかかる可能性があるということです。
トランクルーム・外部収納サービスといった事業自体がまだ新しく、そのサービスの便利さが周知されていないということもあり、軌道に乗るまでは忍耐強く待つ必要があるとのことです。
そのかわり、一度契約が決まるとリピート率は高く、経営は安定することが多いです。
ふたつめは、節税効果がないという点です。
居住用物件の場合は、固定資産税が軽減され、税額が3分の1から6分の1になります。
トランクルームは居住用ではないため、この軽減措置が受けられないのです。
これまで賃貸住宅経営をしてきた方は、想定外に高い税金をとられて驚いてしまうかもしれません。
最後に、トランクルーム建設にあたっては、用途地域の制限を受けます。
ぜひトランクルームを経営してみたい!と思っても、そもそも建設できない可能性があるのです。
トランクルームはどこにでも建てて良いというわけではなく、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域には建設できないことになっています。
市街化調整区域にも建てられません。
せっかく時間をかけて検討し準備を整えたのに、建設できないとなったら元も子もありません。
興味を持ったら、まず土地の用途地域を自治体に確認しておきましょう。
このようにトランクルーム経営にはデメリットもありますが、個人的にはそれを上回るメリットがあると思います。
トランクルーム経営の基礎知識
最後に、トランクルーム経営の「基礎知識」についてお伝えします。
・2つのタイプ
・5つの運営方式
まずはトランクルームのタイプについてです。
先ほども触れましたが、トランクルームには、「屋内型」と「屋外型(コンテナ)」が存在します。
屋内型は、建物全体または建物内の一室をパーテーション等で区切り、そのスペースを個別に貸し出します。
建物を建てるところからはじめると初期投資はそれなりにかかりますが、それでも賃貸住宅ほどではありません。
また、空調やセキュリティ面が行き届いていれば、屋外型よりも賃料を高く設定できます。
屋外型(コンテナ)は、海上コンテナのような堅牢な構造物を土地の上に配置し、その内部を利用してもらう形。
先ほどシミュレーションしたのがこちらのタイプですね。
賃料はあまり高く設定できませんが、その分始めやすいことがなによりの魅力です。
次に、トランクルーム経営の運営方式について説明します。
他ジャンルの不動産と同様、色々な運営方式・契約方式があります。
代表的なものとしては「事業用定期借地」、「サブリース」、「フランチャイズ」、「管理委託」、「自主管理」の5つの形式が存在します。
まず「事業用定期借地(土地貸し)」方式です。
簡単にいえば、トランクルーム業者へ土地を一定期間貸し出すという方式 です。
ですので、厳密には賃料ではなく、地代を得ることになります。
地代の相場は、周囲の状況や土地の形状などによって変わりますが、商業利用の場合では固定資産税の5~8倍というのがひとつの目安のようです。
とはいえ、たとえばコンビニ用の土地を貸し出す場合では、固定資産税路線価の5〜6%が相場とのこと。
固定資産税を基準にすると約3.5〜4倍になりますので、一般的な地代の相場よりも低いことがわかります。
業種によっても相場は前後するようですね。
トランクルーム事業でもあまり高い金額は期待できませんが、オーナーは建物を建てる必要がないので、初期投資も必要ありません。
収益は低いですが、同時にリスクも圧倒的に低くなります。
次に「サブリース(一括借り上げ)」方式。
こちらは、コンテナ施設や建物を土地オーナーが建築し、それらをトランクルーム業者へ一括して貸し出すのです。
業者にマージンを支払うかわりに、物件の滞納率、空室率に関係なく一定額の賃料が入ります。
マージンの目安は、満室稼働時の収入の50%程度。
毎月定額の収入が保証されるので、利回りは計算しやすいですね。
ただし、賃料保証といっても、未来永劫同じ賃料を支払ってもらえるとは限りません。
細かな契約規定などを業者とよく相談して決めると良いでしょう。
次に「フランチャイズ方式」です。
トランクルーム運営企業のブランド・知名度やシステムを利用し、その会社の系列店として運営していく方式です。
コンビニ経営などでよく見かける方式ですので、イメージしやすいのではないでしょうか。
運営企業の看板やノウハウを活用できる代わりに、その企業に対して、フランチャイズ料金を払う必要があります。
フランチャイズ料金の目安は、収入の20〜40%程度。
その代わり、豊富な経験をもとに運営企業から様々な助言やサポートを得られるので、不動産投資の初心者向きといえそうです。
そして「管理委託」方式です。
これは、土地のオーナーが基本的な設備投資や経営面を自身で行い、集客や契約、管理などのみをトランクルーム業者へ委託する方式 です。
賃貸住宅経営で、入居者募集や入居後の管理を不動産管理会社にお任せするのと同じようなものですね。
委託手数料として、収入の10〜20%を管理会社に支払います。
「管理委託」方式や「フランチャイズ」方式では、「事業用定期借地権」方式・「リースバック」方式と違い、トランクルームの稼働率が上がるにつれ収益も上がっていくという、経営の醍醐味を味わうことができます。
ある程度の収入とともに、やりがいも得られそうです。
最後は、設備購入はもちろん、集客や契約、管理業務も全てオーナー自身が行う「自主管理」方式があります。
収益性が最大限に高い代わりに諸々の運営ハードルが高いため、不動産投資初心者が行うには慎重な判断が必要です。
特に、宣伝・集客は最初の壁になります。
とはいえ、賃貸物件の自主大家に比べると、よっぽど負担が軽いのは間違いないでしょう。
基本的に、上記の運営方式のうちのどれかを選び、運営していくことになると思います。
所有する土地や自身のご都合に合う運営方法をきちんと見極めてから決定しましょう。
業者を選ぶときに気をつけたい4つポイント
「自主管理」方式以外では、業務の一部を専門の業者に依頼することになります。
その際に、誰に頼むかというのは非常に重要です。
信頼できる業者を選ぶために、注目しておきたいポイントが4つあります。
・運営しているトランクルームの稼働率が高いか
・運営しているトランクルームの管理が行き届いているか
・ホームページが充実しているかどうか
・建築基準法を満たした施設を運営しているか
まず大事なことは、現在その業者が運営しているトランクルームの稼働率です。
特に、近隣の施設を中心に調べてみましょう。
まだ稼働開始から間もない場合は仕方ないですが、数年たっても稼働率が低いような場合、その業者の運営手腕を疑うべきかもしれません。
現場に足を運んでみるのも大切です。
施設内にごみが落ちていたり、清掃が行き届いておらず薄汚れていたりと、業者が適当な管理を行っている施設は見ればわかります。
安心して管理をまかせられる業者かどうか、事前に確認しておきましょう。
それから、ホームページも大きなポイントです。
ホームページが充実していればいい業者……とは限りませんが、少なくともホームページの更新がずっと止まっているような業者は心配ですね。
なんといっても、ホームページは重要な集客ツールです。
更新状況や掲載内容など、利用者の目線でこまかくチェックしてみましょう。
最後に、特に屋外型の施設の場合には、建築基準法を遵守しているかどうかを確認しましょう。
実は、コンテナを倉庫として利用する場合には、容易に移動できないことからその土地に定着していると見なされ、建築物として扱われます。
コンテナを使ったトランクルームでも、本来は建築基準法に基づく建築確認申請を行い確認済証の交付を受ける必要があるのです。
屋外型のトランクルームを見たときに、
・基礎がない
・基礎はあるがコンテナに固定されていない
・積まれているコンテナ同士が接合されていない
このような施設は、明らかに建築確認を受けていません。
いい加減な業者だと言っていいでしょう。
コンテナを倉庫として利用する事例については、平成16年にはじめて通知が出されています。
しかし、その後も違法に設置されているコンテナは減らないようです。
平成26年には「コンテナを利用した建築物に係る違反対策の徹底について(http://www.mlit.go.jp/common/001066940.pdf)」という通知が出されました。
もし、違法設置のコンテナで事故などが発生した場合、今後取締りが突然強化されることも考えられます。
せっかく建てたトランクルームが撤去されたり、稼働不可となって放置せざるを得なくなったりしたら大変です。
建築基準法を守っている業者を選ぶことは、リスクヘッジになるのです。
信頼して業務を依頼することのできる業者を選ぶために、以上のポイントをぜひ参考にしてください。
まとめ
不動産投資としてトランクルームを経営するという選択肢。
賃貸住宅経営よりも参入障壁が低く、維持管理も非常に簡単。
もちろんリターンも期待できるなど、投資対象として非常に魅力的であることがおわかりいただけたでしょうか。
もちろん全てがスムーズにうまくいくとは限りませんが、まだまだ日本では競合も少なく、今がチャンスともいえます。
早い時期に始めておけば、先行者有利も望めるかもしれません。
【参考サイト】
土地活用でトランクルーム経営をするべき人と成功への全知識
トランクルーム経営について | トランクルーム・レンタル収納ならイナバボックス
トランクルーム経営に必要なノウハウをプロがお教えします | プラスルーム
【土地活用】トランクルーム経営の投資で失敗しない!初期費用からリスクまで総まとめ
https://www.tochicome.jp/trunk-room-summary/
年間250万を生むトランクルーム経営の全知識!4つの長所・3つの短所も徹底解説
【追記】2019年5月17日、2018年11月2日